〈年齢編〉

KFABの練習が月1回程度の合宿形式であることは以前紹介したとおりである。東海道沿線各地から一同に会し、丸2日間の缶詰状態で練習するスタイルである。いつも久しぶりだから、常に新鮮で、何かしら変化があって、練習とメシには必死で取り組み、宴会は大爆発で、実に楽しい。そこには一種の非日常があるのである。 　そんな合宿に時々客人が訪れる。音楽が、アンサンブルが、楽器が好きな、ちょっとこだわりの仲間が「元気？」という具合に訪ねてくれるのだ。音楽談義に花が咲いて盛り上がったり、新たな情報が得られたり、合奏に入ってもらって解釈の違いが参考になったりと、お互い良い刺激になってこれまた楽しい。 　今回の「素顔」シリーズは、そんな客人との会話に垣間見る最近のKFABの素顔を覗き見てみたい。

○昼間の出来事

「こんにちは。おじゃましま〜す。」 「ようこそ、いらっしゃい。楽器もってあがっておいで。今ちょうど合奏で一人足らんから、欠けパートに入ってぇな。」 「えっ、いきなりですか！」 「そうや、ファインアーツは何時でも何処でも、いきなりファインアーツやで。次は『猫』やからね。この曲知ってるよねぇ。」 「猫？っちゅー曲ですか？」 「いやいや、曲の名前はジャムスとかクラーケンとかやがな。」 「いっ、いや知りませんわ。」 「『アイネ・クライネ・ブラスムジーク』（というキング版LONDONレーベルのLP)のLP盤時代から入ってたやつやん。その後『ロリポップ』（クラーヴェスレーベルのCD)にまとめられたやつやん。ジャストブラスの緑表紙の楽譜やん！」 「えっ。LP盤って何ですか？」 「レコード・・・知らんの・・・？」 「23歳です〜！」 「・・・・。」

○宴会で、

「自己紹介のあとは、客人に『見たまんまゲーム』をやってもらうのが、最近のKFABの流行なんやわ。いくつか名物ゲームがあるんやけどな。どれもみんなで丸くなってやるやつで、KFABはそういうゲームが空き何やわ。」 「キャンプみたいですね。ところで『見たまんま』ってどんな風にやるゲームですか？」 「ここにいるメンバー全員を見たまま年齢順に一列に並べてもらって、最後に客人にもその列に入るんやわ。簡単やろ。これが盛り上がるんやわ。」 「さっきから皆さんお互い『先輩、センパイ！』って・・・・」 「そら既にだましにかかっとる、っちゅーわけやな。」 「せめて何かヒントを・・・。」 「しゃーないなぁ。ちょっとだけ質問してええわ。」 「じゃぁ、生まれの干支は何ですか？」 「ウサギやで。27歳やからな。」 「小さいとき、何も漫画見てました？」 「せやなぁ、※※※とか＊＊＊とか。」 「初めて出たコンクールの課題曲は何でした？」 「・・・・」

確かに最近は年月の経過を感じることが多くなった。スケジュールは公私共々忙しくなって、時間のやり繰りもなかなか大変である。う〜ん、寄る年波には･･･。おいおいまだ早いって。 　それでもファインアーツは活き活きしてますよ。ファインアーツの精神は、ブラスアンサンブルを愉しみそれを広く知らせることだ。年がいってもそれ相応の価値観や音楽観や経験が、音楽づくりをむしろ豊かにしてくれる。それは世代が離れていても同じ言葉で対話ができる格好の素材だったりする。ブラスアンサンブルを愉しむことに年齢は関係ないですよ、そこの自称27歳のメンバーさん。 　本日の演奏会、KFABも少しだけ年輪を重ねた空気がその音楽に出ないものかと、内輪ながら少々期待していたりするのである。