初期ロシアのブラス:始まりからヴィクトル・エヴァルドの誕生(1860)まで
ANDRE M.Smith

<初期の西洋からの年代記編集者>

 ロシアの旅人たちによる音楽についてのほんのわずかに現存する意見の数々は、多くの作品に拡散しており、その中で音楽はほんの通りすがりの産物にすぎないと言及されている。少数の真正の資料について、ある結論が導かれる。つまり、音楽…とりわけ娯楽や気晴らしのための音楽は、ロシア人の生活にとって初期の歴史においてはさほど重要な部分を威していなかったということである。おそらく西ヨーロッパからの旅人により最初に書かれた音楽の記載は、Sigismund von Hebersteinであり、彼はマクシミリアンI(1495-1519)皇帝がバジルVイヴァノヴィチ(1479―1533)伯爵へ遣わせた大使であった。彼の文書は簡素で、その??????? “大修道院長と副修道院長として、わたしたちは修道院をおさめてきた。後者をIguments、前者をArchimandritesと呼んできた。彼らの法律と規律は大変厳しいが、だんだんと廃止されていくようになり、廃れていった。彼らはあえて様々な楽しみに甘やかされないようにした。もし誰かがハープまたは他の楽器を持っていることをみつかったりしたら、その人はもっとも厳しく罰せられたであろう。

次の西ヨーロッパ人によるロシアにおける音楽についての重要かつ当時最も価値のある叙述は、ロンドンの医師であるSamuel C.Collinsからのものである。コリンズは1619年に生まれ、ケンブリッジとオックスフォードで医学を学び、1650年にMDの称号を受けている。9年後、彼はロシアへ旅をし、Alexis Mihailovicbの医師となった。1669年、コリンズは英国に戻り、彼のロシアの短期滞在の回顧録を書いた。彼の思い出は今日の音楽家にとって特別な興味であり、なぜならコリンズはロシアでロシア人が金管楽器を演奏するのをはじめて聞いた人であり、演奏の方法を英語により記録した人だからである。以下の彼の本からの文章"The Present State of ..."は、音楽について取り上げており、ここでは1671年からはじめて全体的に再販されている。

 “Chapter Z. 彼らの音楽。大使の一人の物語。ロシアのBeggards(こじき?)が、歌、太鼓、トランペットや狩猟用のホルンを物乞う。 あなたがこの神聖なる教会を去る前に、ロシアの音楽の何かを聞きたいと祈りなさい。それ以来ずっとオルフェウスの時代に、これらのBeasts(野獣or野蛮人)は喜ばれていた。

 もしあなたがMusick os the Bears(天上の音楽)を聞いたならば、そこにいておおぐま座の音楽を聞き、祈りなさい。随時に微笑みと涙を出させる。 彼らはとても甘く抑揚を歌につけており、あなたを感嘆するだろう。

彼らの笛吹きはあたかも播(牧羊神→ヤギの足を持ち笛を吹く)が霊感を与えたかのようである。そしてハープには琴座。 スウェーデン人はロシア人をおおくま座と呼んだ。ところであなたにオランダで大使であったときのEliahの話をしよう。この男は肉も魚もすべての珍味の取り引きをしており、??????我慢したロンドン人のギルドを破壊するのに十分であった。オランダ人はオランダにおけるすべtねお最高の音楽により喜び満足し、声も楽器も彼にどれくらい好きかと尋ねると、彼はとても好きだと答え、ロシアにおいてBeggards(こじき?)はそのような歌をと願ってきた。それらがどのような歌であったかは、私は知らない。しかし、ここのすべてのBeggardsは囚人やかたわ者に劣らず歌うことが好きで、荒々しい調子によらず、精力的なゆったりとした声であった。ロシア人はやわらかくてなめらかな、というより、女性の太った体格の方が好きであった。しかし、私は彼らの音楽に近づいたが、私はほとんどそえを歌うことに飽きることもなかったはずである。あなたは彼らが音楽学校を持っていたことを知る必要があり、そこでは子供たちがよく勉強をして育てられ、とても厳格なところであった。彼らの音符はとても不思議で、私の想像ではギリシャ語かスカンディナビア語を模擬しているであろう。?音階は、少し変化を持っており、ファ、ソ、ラのかわりにガ、ガ、ゲと声を震わせて歌い、まるでさるぐつわをはめられているか、のどを締め付けられているようだった。彼らの声の抑揚や音の終止法は大変意外なもので、レッスンの最中の治安官がやって来たときには、私のバイオリン響きも同じように驚いていたように思われた。ときどき、彼らは坂道を激しく走って登り、まるでイタリアの叙唱音楽を真似ているかのようであった。ついに、彼らが子供たちを完全にバス、テノール、コントラテノール、そしてボーイソプラノとして育て上げたあかつきには、あなたは素晴らしいコンソート(合奏)を聞くことができるでしょう。

 彼らはしかしながらほとんど楽器の音楽を演奏しなかった。というのも、当時ローマカトリック教会と対立していた初期教会の大使教により禁止されていたのである。そして、国家政策により市民の中にすべての音楽と浮かれ騒ぎごとを禁止する考えがあり、それも女性的なことを妨げるためのことであった。彼らは、バグパイプ、小さなバイオリン(リュートに似た形をした)を持っており、4、5曲演奏していた。彼らの軍人らしい音楽に関して言えば、彼らはケルトドラムを持っており、その鈍い響きの音は、ロシアの陰気な素質にはよく合ったようだ。そして、トランペットであるが私は長くは使われていなかったと思うが、彼らはほとんどそれを吹くことができず、Son−Gelderが彼のホルンを吹くようにはうまくできなかった。彼らの狩りの際に、しんちゅうのらっぱを用い、概してとても醜い音(noise)を出していた。要するに、もしあなたがロシアの音楽を好むなら、ひどい声のナイチンゲール(鳥)、コノハズクの飛行、コクマルガラスの巣、腹をすかせたオオカミ風の強い日の七匹の豚、発情期の多数のネコたちにラクリメ(涙の歌)を歌わせれば、イタリアのすべての音楽やフランスの軽快な歌、イングランドのマーチ、スコットランドのジーグ(舞曲)よりもずっとロシア人の耳をうっとりとさせることができるであろう。

 コリンズがどのような音楽教育を受けていたのかは不明であるが、彼がきいたことのある音楽の中で、最も嫌いなものが何であったかをはっきり口に出すことができるほどに十分音楽について知っていたことは明らかである。

<A Legacy of Begun by Samuel Collins?>

 ロシアにおける金管楽器の演奏方法についての意見は、西洋における問題を解決できていなかったように思われる。1962年、Mary Rassmussenがトロンボーン奏者Davis Shuman(1911ー66)について書いており、“彼のスタイルはきっぱりとフランス風であり、広く分散した、一点に集中しない調子(tone)、それがトロンボーンの音を安っぽいバリトンホルンのようにしており、彼の演奏は爆破のように吹き鳴らし、泣き声のようで色彩のない無感性なものである。”としている。

Rassmussenは、Shumanがロシアで生まれ、ロシア人によってボストンでトロンボーンを学んだということを、見たところ知らないようで、彼自身を古いロシアのスタイルの提案者であるとみなし、西洋は不幸にも1917年の11月革命に続く世界の歴史により厳しくされたと信じていた(?)。私は、ShumanがこれまでにRassmussenの彼のトロンボーンのスタイルに対する意見について読んだかどうかは知らない。私が言えるのは、しかしながら彼の人生の最後の4年間における私との頻繁な交際に基づいて、彼はフランスのものとして分類された議論の余地である(疑わしい)トロンボーンの手法について聞き、驚いており、自信をもってそれは違うと言えることだ。

 1976年、Tom EverllがMassachusettsユースウィンドアンサンブルのコンサートツアーについて記録を残しており、その中で彼はヘルシンキ、モスクワ、レニングラードにおいて副指揮者であった。レニングラードにおけるリムスキー=コルサコフ音楽学校の高い水準の音楽教育についての詳細な記録のいくらかと、生徒の深刻な目的について彼が言及している言葉は、“私の聞いたことのあるプレーヤーは荒々しく鋭い息の発射による大きな音で演奏する傾向にあり、とても興奮する概念である。しかし、私は鋭敏さ、またはレガートの表示は全くきくことはなかった。”とのことである。

実際にロシアのブラスの手法は、ひとつは今世紀のアメリカにおいて、遠方からも感嘆されているあるロシア人の金管奏者で西洋で知られるようになった人に所有されている明白な音楽家の地位の証拠は、アメリカの楽器に対する民族精神の中に組み込むための序奏としてのスタイルを輸入しようとする試みは、生じてこなかった。

 その心からの感嘆の表現は、だいたいいつもEverretのように遠慮として調整されていった。ロシアにおける芸術音楽のブラススタイルの発達による早期の影響は、西洋人の音楽家たちにより西洋から輸入されていた。今世紀最初の十年を経て、ようやくロシア人の金管奏者により定義づけられた独自の国家的スタイルが発達した。彼らは、東ヨーロッパに道の領域を残している。地方または国家的なスタイルが進歩してきたと信じられている特徴により、広く定義されている限り、先のスタイルは廃れていった先駆者として分類されてゆくのだろう。

世界中で、ある国家のスタイルが存続力を維持しており、それはどこもかもの演奏家からも否認されてきたことであり、それは先のUSSR(ソ連)の国家政策の問題としての74年の孤立の結果である。
(担当:浅野)

<エリザベス朝における音楽と政治>

 以下に述べる“グレート・ペーター”(1672 - 1725)のロシアの西欧化についての野心は、西欧の文明(化)の進歩とともに、それによってきっちりした発展をもたらした。セント・ペテルスブルグの宮廷は、結婚と陰謀の双方によってドイツ宮廷の中へ発展させた。19世紀中頃までのロシアにおいて、最も賛美し、見習うべき文化はドイツであった。たとえ、そのことがペーターの王位継承者への支配権の修正(?)となっていたとしても、ドイツはアレクサンダーV(1845 - 94)の支配権の支持者のフランスによって幾らか変わっていた。

 Sohia Augusta Fredericka('1729 - 96)は、ロシアのAnhalt-Zerbst公国のステッチンで生まれた。ロシア王フレデリック(1712 - 86、在位1740 - 86)彼女の両親の熱望の下で… 彼女は13歳のときに、プロシアとロシアの政治上の糸を太くするための結婚であることを覚悟させながらセント・ペテルスブルグに移った。ソフィアが外国に送られる2年前、オーストリアの王位継承戦争(1740‐ 48)が始まった。フレデリックは、彼女の結婚に思いをはせ。。。。 1713年、20歳のときBestuzhev - Ryminは、ハノーヴァーの選帝候であるGeorge Ludwing(1660 - 1727)の大使館員になった。選帝候がジョージエの…次の年に、イギリスの王位に就いたとき、B.Rはイギリスからロシアへの使節となった。セント・ペテルスブルグの時代を通じての彼の最終目的は、英・ロ・オーストリアそしてザクセンの間の有利な同盟を確固たるものとすることであった。

 オーストリア王位継承戦争は、1748年のAix-La0Chapelleの条約により決着した。この一見平和に見える空位期間は、7年戦争(1756-63)まで続いた。B.Rは、その戦争でロシアの優位な位置を際立たせる重要な任務を担当した。ロシア政府の中の権威と力のより高い身分へ昇った。それはAix-la-Chapelle条約の年のことだった。しかしながら、B.Rはボヘミアから、その当時のオーストリア−ハンガリー帝国の一部であったMares招かれた。セント・ペテルスブルグ近くの彼の私有地のオーケストラのホルン奏者になったことに対して、このオケは多くの他のロシアの芸術学会がそうであったのと同じように1861年にアレキサンダーU(1816−81)による農奴解放とともに存在していた。ロシアのホルンバンドの創立に導いたロシアにおける音楽の歴史の概要がある。自由な抜き書き…

 最も大きいものは2m、最も小さいものは30cmの長さであった。最も大きいものは3m、最も小さいものは20cmの長さのときは、編曲が改訂された。“アーチスト”達とその楽器は、その宮殿まで20頭の雄牛が引き荷馬車で運ばれた。とても静かな天気で、そのオーケストラは、6km(ほぼ4マイル)離れた所でも聞こえたそうである。静かな夜にはそれは20kmでも聞こえた。
(担当:田中)  ロシアの金管バンドは(脚注33.の)ロバート・リックス:(「ロシアの金管バンド」の著者?)と一緒に経験してきた西部の何人かの音楽家たちから様々な(賛否両論という)意見を受けた。しかしその意見のたいていの変わった残り物は、−少なくとも英語で書かれたものは−前述のC.Alexander一世の金管バンドのメンバーによるものであることを意味する。しかもまた著者はイギリス人であったことから、私はリックスの”それはこの金管バンド(C.Alexanderの)が華やかに演奏することを許されているという社会環境(の英国の反応)を表している”という意見に賛成である(=同意している) 。その文と(その文の中の)珍しいもの(前述の変わったもの)のどちらもここに結論を正当化している。

 The Harmoniconの編集者様
 ロシア帝国金管音楽界の F-sharpより

 拝啓、
 哲学や政治学が人間を最も簡単な表現へと適合させる目的となっている国では、全ての(公共)機関は、 ある程度の自由が存在する国の文明化している居住民にはなじみのない特定の性質をもち、人の存在価値は、まれに機械的で植物的な状況には下げられていない。おわかりのようにロシアは科学が(人々の意識に)潜んでいるヨーロッパの一部なのである、ということです。

ペテルスブルクでの音楽は(私の意味する音楽的な演奏は)ウィーンやベルリン、ミラノ、パリ、ロンドンやそしてメロディーがある程度進化している世界の一部でのそれ(=音楽)とはとても異質なものだということは否めないでしょう。ペテルスブルクでのハーモニーの演奏は約24人の音楽家が形作る。これらの演奏者たちのそれぞれの働きは1つの与えられた音を奏することの限られる。たいていの厳しく几帳面な注意は人間の肺に確立された本能的な質だけである;それゆえ彼らはこの限られた地位の前では(思考)能力を広げることなど考えもしないでいかなる才能の傾向をこれっぽっちも示さないのである。彼らはいつも自動装置として敬意をはらわれ、決定能力などはもたされていない。

あなたは、人間がオルガンのパイプのようにされることを理解できますか?今あなたにこうして手紙を書いてある者が30年もの間ロシア皇帝の音楽のF♯を担当しているということが信じていただけますか?私は、よりすばらしい運命へと導かれていると、少なくとも信じたい。だが 、残酷な出来事が私の運命を変えてしまったのです。私の運命はたった1日で引き裂かれてしまった、私は宮廷の好意をひくだけのためのものとされたのです;私は思考の存在に雇われている価値があるものだと望んでいた、そして彼ら(=宮廷)はメカニズム(=構造)の部分であることを話してくれた。私は1年あたり100ルーブルの割合しかない単なる音楽となってしまったのです。

 ある日、私は突然フランスから送られたフルートに完全な息を吹き込んでやろうと決心した。その信念の見返りに私は多くの非難をうけ、そしてその非難は容赦なく殺到し、私の地位はそこでストップしてしまった。この後私は6ヶ月間プロシア王(ドイツ北部)のもとへ生かされたが、耐えることを運命づけられたことにより、その間飽きることをも通り越してしまったし、理解が木管楽器に転換している国からは、いくらの進展も望めなかった。私の仲間であるGやB♭、そしてAも同じような目にあっている。我々は近々ロンドン入りし、いくつかのコンサートを開けることを願っている。そこでは不利なことがわかるであろうし、我々のバンドには誰一人として非難されるような一時的重罪犯人もいない;それにもかかわらず、我々は自分達の演奏の物珍しさが興味をかきたてることや、奴隷に対する無関心さが今日までの残酷な状況にさせた、その奴隷への同情心も促すであろうと期待している。

(サインで)あなたの謙虚な召使い
      Kouloff(コウロフ)
      全ロシアの皇帝H.I.M.にF♯と称して
      1824/5/3

 ロシアの金管バンドはナポレオン一世時代の出征に続いて激減した資金では支えていけない他の芸術家のアンサンブルと一緒に破産状態が拡大し、貴族たちが解散を強要するまでは成長したアンサンブルであり続けた。これらの問題はまた、軍の任務のために多数の奴隷たちが土地から土地へと移動したり(奴隷から)一般国民の奴隷状態へと移行したりする、人工統計学でいう分裂によって混ざり合っていた。(これらの問題に対する解決の)試みは、このアンサンブルが復活してからただの一度もなかった。

<他のロシアの貴族達>

 ロシアの金管楽器のデザインのバリエーションはどんどん出続けいるが、頻繁にではなく、西側での自由な範囲でもなかった。ロシア人達の好奇心を独占的に保ち続けたのは、ロズホック(rozhok)(またはロシアンコルネット)であった。 ロズホックは堅い木で作られており、戸外で使用する際の特に寒い天候の時や(同じく戸外での)湿気の多い時の悪影響にも対応する。音色はソプラニーノからテノールまで広い。前の指(親指以外の指)の穴はたいてい四〜五つで、親指は縦笛と同じように一つの穴がある。特殊楽器の音色によってチューブの長さは、7インチから20インチまで変えられる。元来、シェパードのパイプは単独に演奏されるものだが、ロズホックのアンサンブルは、コーラスを伴奏したりもした。ロズホックは20世紀前半まで盛んな(活動的な)民族楽器であり続けた。
(担当:古市)

<芸術音楽における金管楽器>

 ホルンバンドの登場と宮廷劇場の発展はほとんど同時であった。独立した劇場は17世紀中期にモスクワで始まった。「モスクワの北西のYaroslavl市で1750年にFedor Grigorievich Volkov(1729 - 1763)により設立されたロシアにおける最初の専門の劇場」として約100年後洗練された。これらの発展において、音楽がどういう役割を演じたかは、現存する当時の記録からはっきりしないが、宮廷音楽には主にフランス人とイタリア人、著名な後者にはBaldasare Galuppi(1706 - 85)、Tomasso Traetta(1727 - 79)、Giuseppe Sarti(1729 - 1802)、Vincenzo Manfredini(1737 - 99)、Giovanni Paiseillo(1741 - 1822)とDomenico Cimarosa(1749 - 1801)を含むが、の影響を受け続いたとしう際立った歴史があった。

 Catherine2世(1729 - 96)によって証明された劇場の関心事(支配力、影響力?)と音楽の一つの自然の成り行きは1791年の彼女のオペラ「Nachal'noe upravlenie Olega, podrazhanie Shakespiru bez sokkraneniia obyknovennykh teatral'nyk pravil [the Early Region of Imitation of Shakespeare Without Preservation of the Usual Teatrical Rules](通例の劇場の決まりの保護のないシェークスピアの模倣の初期の御世)」の有名な上演だった。劇場での上演やギリシャの古典主義、過激台本の記述、作曲法の経験はないが、ロシアの言葉を自由にあやつる歩み寄った力で、彼女は賢明にも自分自身を助けてくれると信じている人々に、自分の芸術的熱望を実現させるよう援助を求めた。彼女は、自分のテキストの音楽を書くために3人の作曲家を選んだ。Sartiに加え、CanobbioとVasily Alekseyvich Pashvevich(ca 1742 - 97)がいた。金管楽器は幕間の余興や、管楽八重奏(4本のホルン、2本のトロンボーン、2本のセルパン)とトライアングルのための短い行進曲(図12に再現している)だけで使用されていた。管弦楽法はフランス風で、この行進曲と同種の音楽を、彼女は当世のフランスのオペラかモーツァルトの初期のオペラから聞くことができた。Canobbioも1791年に独立して4本のトランペット、2本のトロンボーンとトライアングルのための短い軍隊行進曲を書いた。

セント・ペテルスブルグからの他の初期の他の舞台作品もあり、それはその後のすべての注意を免れ、1931年以来その楽譜を所有している議会図書館により、掘り出し物の一つは救出されたように思える。Vladislav Alexandrovich Ozerow(1769 - 1816)によって劇曲化されたFingal(1805)には合唱、バレエ、そして「戦闘」を含んでいる。そこにある貧しい音楽は、付随してそのようなものとして、強調された戯曲の流れに比べ些細だとされている。当時、セント・ペテルスブルグにいた作曲家はポーランド人のOsip Antonovich Kozlowski(1757- 1831)だ。Kozlowskiの管弦楽法は一風変わっていて、2本のホルン、2本のクラリネット、2本のバスーンと1本のバス・トロンボーンをコントラ・バスーンで重ねてあり、すべて4声の男性合唱の伴奏をしている(図13参照)。音色効果においてそれはベートーベンのフィデリオの"Prisoner's Chorus(囚人達の合唱)"といくらか同系である。。フィデリオは1805年11月20日にウィーンで初演されたが、Fingalはわずか一ヶ月以上も前にその完全初演に向けて完成し、計画されていたと推定されなければならない。したがって、フィデリオといくつかの類似点は一致する。

 この時期から、ロシアの国民的スタイルの芸術音楽の発展において解決する力を持つようになったそれらの音楽家の影響が増加するにつれて、西からロシアへの断片的な移住や帰国が加速した。作曲家が有力な演奏者であったという、1800年代前半、一世紀間ヨーロッパ大陸のほとんどの国に存在した強制された組み合わせの伝統がロシアにはまだなかった。

<Mikhail Ivanovich Glinka(1804 - 57)>

 独特のロシアの芸術音楽が民間伝承と音楽からロシアの東洋的なテーマを大いに利用したシンフォニー・オーケストラのために発展したのはGlinka(図14参照)の音楽をもってであった。彼は西ヨーロッパ的な技巧と管弦楽的表現の方法を用いて独特のアジア的主題と芸術的理想を結合する、現在も続いているロシア人の流れの先駆けであった。Glinkaの初期の作品の総ては小編成の声楽とピアノのための歌曲や器楽による室内楽曲であった。

Glinkaは、1828年まで4年間、セント・ペテルスブルグで聖職者の報道機関に勤めてとどまっていた。個人的にイタリア人の歌親方[Agostino?] Belloli(1778 - 1839)に2年間学んだあと、彼はイタリアに出発し、そこに3年間とどまった。当時ヨーロッパでより傑出していた、たとえばSchubert、Spohr、Weber、MendelssohnやDonizetti、Bellini、Spontini、Rossiniを含むイタリア人のような作曲家の知識を向上したのはすべてその地であった。

 1834年彼の父親の死後、グリンカはロシアに戻ってきた。彼はその時彼の最初のオペラに対する仕事を始めたところで、1番目はロシア人によってロシアのテーマで作曲された物だった。Ivan Susanin; または「A Life for the Czar(ロシア皇帝のための命)」(1836)もまた、現代の様式で金管楽器の多数の補充音程を使用するロシアで最初のオペラである。彼の最初の作品は、金管楽器の使用の範囲を変えた。例えば、Kamarinskaya(「Fantasy on Two Russian Folk Songs(2つのロシア民謡による幻想曲)」)(1848)では、対になったトランペット、対になったホルン、およびバストロンボーンはSpohrか初期のWeberを思い出させる。

 それはたとえば、Glinkaや後期のワーグナーのように影響が大きく、彼らがロシアでしたと同じように金管楽器が発達した。Mily Balakirev(o.s. 1836 - 1910)やAnton Rubingtein(1829 - 94)の成熟した作品における金管楽器の記譜や演奏の再編成は1873年セント・ペテルスブルグでのArbanの最初の出現によった。そしてドイツの合唱団の様式の大規模な採用は国外追放になったドイツ人やボヘミアの音楽家によってロシアにもたらされた。

<著者について>

Andre Smithは、バス・トロンボーンをRobert Harper(フィラデルフィア管)、Arnold Jacob(シカゴ響)およびRoger Smith(メトロポリタン・オペラ)に師事した。彼の生涯の関心の一つは、その19世紀の金管楽器の歴史であった。そしてそれらの発展がどのようにその20世紀の特有の金管楽器の構造に寄与していったかであった。彼はまた、金管楽器の演奏との人間の生理学の間複雑な相互間系についても、広範囲に記述している。
(担当:藤本)

<参考文献>
Smith Androw: "Brass in Early Russia: From the Beginnings to the Birth of Victor Ewald, 1860." 
ITG Journal 18, no.2(December 1993):pp4-20

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