最初にあなたの音楽を聴いた時、全身に電気が走ったかのような強い衝撃を受けたことを 覚えています。音楽に込められたあなたのメッセージは、直接私たちの心に飛び込んでき ました。その時からでしょうか。あなたのことを知りたい――と、こんなにも強く感じ始 めたのは。そして色々と追い求めてゆくうちに、私たちは偶然ではなく運命的にあなたの 言葉に出逢ったのです。

　『音楽はたったそれだけで、言い表すことのできないものを表現することができる』

私たちはいつも何かを思い描きながら演奏をしたいと思っています。例えば、その曲から 浮かぶ風景を絵にしてみたり、ダンスの曲なら実際に踊ってみたり、とにかく音楽を常に 体感していたいのです。そうして、何回も練習を重ねるごとに私たちに染み込んだ音楽は めまぐるしく変化しながら熟成してゆき、新しい音楽がにじに出してくるのです。だから、 面白いのです。それは、演奏をしている時だけでなくいつも自分の中で流れているものであり、 だからこそ胸に迫り来るものがあるのです。

　あなたの送った人生について、あなたの生きた時代のこと。あなたにとって悦びとは、 悲しみとは･･････私たちは直接あなたからお聞きすることはできません。曲中の ”espressivo”とは、嘆き、悲しみ、喜び、それとも怒りなのでしょうか。

　あなたの音楽を演奏していて、確かに私たちの心に伝わるものがあります。音楽に込めれた ”メッセージ”を感知し、その音楽を演奏することにより私たちのこの溢れる想いを 返事として敬意をもってお伝えしたい。あなたが安心して土の中で眠っていられるような、 それともあなたの深い眠りを思わず覚ますかのような、私たちの創り出す音楽がそういう ものでありたいと思っています。